花で差をつける年賀状デザイン|日本の花文化と縁起物で表現する新春の彩り

椿や梅の花が、なぜ年賀状に使われるか疑問に思ったことはありませんか?新年を祝う華やかな花であればバラや蘭でも良さそうですが、伝統的な年賀状ではあまり見かけません。

この記事では、日本で愛されてきた植物の背景を紐解き、年賀状にふさわしい花や避けたほうが良い花を紹介します。新春を祝う花々は、単なる装飾以上の意味を持ちます。プロのデザイン例や花の魅力を知って、いつもと違う挨拶をしてみませんか。

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目次

なぜ年賀状に花が使われるの?

正月飾り

お正月といえば、しめ飾りや門松、鏡餅など縁起の良い飾りが一般的です。年賀状でも鶴やだるま、富士山といった縁起物が描かれてきました。花もよく使われ、華やかな印象を与えます。なぜ花が描かれるようになったかといえば、日本の文化や季節と結びついてきた背景があります。

文化的な背景

日本では、古くから花が季節や祝い事を表す重要な象徴として用いられてきました。平安時代から続く和歌や短歌など、文学作品にも多く登場します。源氏物語では藤壺や末摘花(すえつむはな)をはじめ、120種類以上も登場するといわれています。

俳句の季語にも使われ、春は桜、夏は朝顔など、四季の美しさを花で表現する文化が引き継がれてきました。手紙やメールでも、以下のような季節の挨拶を交わします。

  • 桜のつぼみも膨らんで
  • アジサイの花が鮮やかに咲き誇る季節となりました
  • 金木犀の香りが漂うこの頃、いかがお過ごしでしょうか
  • 寒椿が冬の庭に彩りを添える季節となりました

相手への安否を気づかい、細やかな配慮を添えることで、心のこもったメッセージを伝えることが可能です。

季節感の表現

冬の花

日本では四季があるため、花と季節は密接に結びついています。年賀状に多く使われる花は、冬から春にかけて咲く植物が用いられます。以下はよく描かれる花や植物の一例です。

  • 椿
  • 南天

冬から春への訪れを表す桜や梅は、新しい年への希望や再生を表します。椿や南天は、厳しい冬を乗り越えて咲くことから、生命力や不屈の精神の象徴として扱われるようになりました。松竹梅は、正月を象徴する縁起物としてよく描かれます。

縁起物としての意味

新年を祝う年賀状には、縁起の良い花が好まれてきました。代表的な松竹梅は「歳寒三友(さいかんさんゆう)」とも呼ばれます。厳しい寒さにも耐える強さから、めでたい表現には欠かせない存在です。

南天はつややかな赤い実がつく植物です。「難を転じる」という語呂合わせから、魔除けや厄除けの意味を持ち、幸運を呼ぶとして好まれてきました。縁起物の定番である、富士山と組み合わせて描かれることもあります。

新年の挨拶を花で表現することで、送り手の願いや祝福の気持ちが込められてきました。

年賀状にふさわしい5つの花と花言葉

花言葉

年賀状にふさわしい5つの花と、花言葉を紹介します。年賀状のデザインを決める参考にしてください。

松竹梅

松竹梅

松竹梅は縁起の良い植物が組み合わさっているため、お祝い事の定番です。

松は冬でも枯れず青々とした姿から「不老長寿」の象徴とされています。他に「永遠の若さ」「勇敢」「同情」などの花言葉が一般的です。

竹は成長が早く折れにくいことから「生命力」や「成長」の象徴として描かれてきました。花言葉は「しなやかな強さ」「節操」「誠実」です

鮮やかな色で描かれることの多い梅は、厳しい寒さに耐える強さを持つことから「出世」や「開運」の象徴として人気です。花言葉は「高潔」「忠実」「忍耐」といった意味があります。

牡丹

牡丹は豪華な見た目から、栄華の象徴とされてきました。花言葉は「富貴」「花王」「恥じらい」です。

中国では「百花王・花王」と称され、不老不死の象徴とみなされてきました。日本には漢方として伝来したといわれ、平安時代には観賞用として広まり、日本文化に深く根付いていきます。特に貴族文化や花道、祭礼などの場面で重要な役割を果たし、縁起物として広く認識されました。

花道の書物『立華指南』にも、牡丹を高貴な花として特別な場合にのみ用いたと記されています。恥じらいのイメージは、馴染みがないかもしれません。しかし大きく咲いた花の中にわずかに閉じている花びらの姿が、慎ましい印象を連想させます。

椿

椿は花が落ちる様子から、縁起が悪いと思っている方も多いかもしれません。しかし寒さが厳しい冬の中でも花を咲かせることから、生命力や忍耐の象徴とされてきました。花言葉は「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」「忍耐」です。

古くから神聖な木とされた椿は、枝や葉を焼くことで出る灰や煙が、災いや悪霊を祓うとされてきました。正倉院には椿の枝で作られた卯杖(うづえ)が納められています。卯杖(うづえ)は、新年の初卯の日に邪気を払う道具として用いられた杖のことです。

椿は日本文化において、単なる美しい木以上の意味を持っています。現代では、主に美と生命力の象徴として扱われるようにもなりました。

水仙

水仙

水仙は寒い冬でも花を咲かせ早春に咲くことから、新しい始まりを象徴します。花言葉は「再生」「希望の象徴」です。

水仙の別名はさまざまで、以下のように呼ばれています。

  • 雪中花(せっちゅうか):厳しい冬でも凛と咲くことから
  • 雅客(がかく):水仙の優美な姿から
  • 金盞銀台(きんせんぎんだい):香り高く高貴な姿と希望から

冬から春にかけて凛と美しく咲くことに由来し、春を告げる花としても親しまれてきました

中国では特に縁起の良い幸運の花として人気で、風水では玄関に飾ると、邪気を払い幸運を呼び込むとされています。日本でも親しまれてきた水仙は、全体的にポジティブな印象を持つ花です。

南天

南天は冬に赤い実をつける花で、お正月飾りや庭木として親しまれてきました。「難転」の語呂合わせから「難を転じて福となす」という意味があり、縁起の良い植物とされています。花言葉は「福をなす」「よい家庭」「幸せ」「機知に富む」などが一般的です。

江戸時代の百科事典『和漢三才図会』には、南天を庭に植えると火災を防ぐ効果があると記されていました。風水でも縁起の良い植物として知られ、魔除けのために家の鬼門に植えられることもあります。

南天は語呂合わせや歴史的な背景から、身近な縁起物として親しまれてきました

年賀状に避けたほうが良い花と理由

白い花

年賀状は新年の幸福を願うため、縁起の良いもので描かれます。しかし、花であれば何でもよいわけではありません。できるだけ避けたほうが良い花を紹介します。

白い花

白い花は、年賀状には避けたほうが良いとされています。白は日本の文化において、喪中や葬儀と関連づけられることが多いからです。日本の色彩感においては「死」や「別れ」を象徴することもあります。特に白菊は葬儀で使われることも多く、お祝いの場では避ける傾向です。

ただし、必ずしも白がお祝い事にタブーではありません。白は「けがれがない」や「純潔」、「清楚な印象」といったイメージを持つため、結婚式や冠婚葬祭によく使われます。白い梅の花も、気品ある新年の象徴として使われることがよくあります。

彼岸花

新年のお祝いに赤や金色が使われることは多いですが、彼岸花はおすすめしません。彼岸花は別名「曼珠沙華」といい、本来は縁起の良い花とされています

しかし彼岸花は寺院やお墓の周りに多く咲くことから、死や別れを連想させる花と思う方も多いようです。さらに彼岸花は毒があるため、恐れられていたことにも関係します。

花が咲くのは秋のため、新年の季節感にも合いません。年賀状は相手を祝福し、良い年になるよう願うものです。不吉なイメージを持つ花の使用は、マナー違反と言えます。

枯れかけの花や下向きの花

枯れかけの花や、下向きの花を選ぶのはやめましょう。主な理由は以下のとおりです。

  • 風水では「死んだ花」とされている
  • 活気がなく暗い印象を与える
  • 衰退や不幸を連想させる

新年を明るく祝う目的の年賀状で、下向きの花を使うのは、相手への配慮に欠けると受け取られかねません。受け取った相手にも、ネガティブな印象を与えます。

年賀状には、一般的に長寿や繁栄など、吉祥としてのシンボルが描かれます。生き生きとした上向きの花や松竹梅、梅のような縁起の良い花を使ってください。

プロが作った花の年賀状のデザイン

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まとめ

お祝い

年賀状には、梅や椿などさまざまな花が使われてきました。描かれる理由は季節を表すだけでなく、「新たな始まり」や「希望」を象徴する文化的な意味もあります

お祝い事を花で飾り表現する文化は受け継がれ、縁起物としての意味も大切に受け継がれてきました。しかし松竹梅や椿などの代表的な花がある一方、避けたほうが良いとされる花もあります。

華やかな花が描かれた年賀状は、気持ちが明るくなります。新年をお祝いし相手の幸福を願う年賀状に、思いを込めて花のデザインを送ってみてはいかがでしょうか。

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